マンションは「住居用」として建てられているので、住居以外の目的で使用することができません。
賃貸契約書には必ず使用目的欄があり、「住居専用」と記載されています。契約上、使用目的以外の用途で専有部分を利用することはできません。
賃貸マンションは居住に適した生活環境を提供しなければなりません。仮に、住居以外の用途が混在すれば、平穏な生活の確保ができなく恐れがあります。
その他にも、法的な問題があります。
この記事では、賃貸マンションにおける住居以外の使用について、法律的な問題点を解説します。
建築基準法の確認申請
建物を新築する場合、建築主は工事着工前に「建築確認申請」を行います。法律または条例に適合した建物でなければ、工事を着工することができません。
建物の用途によって受ける制限は異なり、不特定多数が利用するほど構造、防火などの制限が厳しくなります。
マンションの用途は「住居」。マンションは住むことを目的とした建物です。
申請時と異なった用途での使用は違法(違反建築物)の恐れがあります。
また、建築後に一部の部屋のみを合法的に用途変更することは、ほぼ不可能なことです。
建築基準法の完了検査
工事完了後は、建物が申請通りに建てられているかの「完了検査」があります。
この検査を通過すると「検査済書」が発行され、建物の使用が正式に認められます。
原則、建物の検査はこれ以降ありません。
検査後に変更工事があったとしても、「変更申請」が提出されない限り、確認も検査もしようがありません。
そのため、検査後に用途を変えて使用する建物があるのも事実です。
市又は県の建築局による違反建築物の取り締まり
違反建築物の取り締まりを目的とした建築パトロールがあります。行政の仕事です。定期的に市又は県の建築局による公開建築パトロールが行われています。
通報による現場調査もあるようです。
マンションの1室を事務所で使用する程度では、取り締まりの対象とならないでしょう。マンション1棟ごと、明らかにテナントビルに変っていれば別ですが。
違反建築物の取り締まりは「是正指導」。悪質な違反には是正措置命令が発令されます。因みに、指導は法的な強制力はありません。措置命令は公開され、行政処分が下されます。
消防法
建築の「建築確認申請」と同時に、管轄の消防局も事前に建物の審査を行います。消防設備や避難経路等の確認を行います。この時、消防局の「同意」がないと建物は建てられません。
「完了検査」についても同じです。
住居を不特定多数の方が出入りする用途に変更した場合、消防法に抵触する恐れがあります。
消防局の立ち入り検査があれば、避難・消火設備などの不備を指摘されます。
消防局の立ち入り検査
消防局の立ち入り検査は建築パトロールの「是正」とは異なり、明確な「罰則」があります。人命に係ることなので重要です。
流れは
立入検査→是正指導または警告→略式起訴→罰金刑
万一火災が発生し死傷者が出れば、貸主または使用者は重大な責任を負うことにもなります。
税 法
大家さんがもっとも気にするのは「税」ではないでしょうか。
建物の用途が「住宅」と「住宅以外」では、大家さんが支払う税金が大きく異なります。住宅は税制面で優遇されているからです。
固定資産税
建物を新築すれば大家さんに新たに固定資産税が発生します。
入居者には直接は関係ありませんが、使い方によっては大家さんの負担が増すかもしれません。住宅は「課税標準の特例措置」で固定資産税が安くなっているからです。
住宅として建てられた建物または区画された部屋が、住宅として使われていないのは、固定資産税の算定上に大きな問題があります。
消費税
「賃貸住宅」の家賃と共益費は非課税です。
住宅以外は課税対象となります。もちろん、消費税を払えば住居が事務所として使える訳ではありません。
固定資産税の算定が「住居」の部屋を、「事務所」として貸して消費税とは辻褄が合いません。
現実、「消費税」と称して家賃値上げをしているケースが多いようです。
実際、マンションを事務所や店舗で貸してますよね?
マンションを事務所として貸すのは、大半が空室対策です。稼働率が良いマンションを敢えて事務所で貸す必要はまったくありません。
事務所として貸す場合、住居兼用の「住居」として契約するのがほとんど。あくまでも主要用途を住居とします。
事務所単独での使用を認めているケースもありますが、それでも、契約の使用目的欄は「住居」。法人登記、郵便ポストへの社名表記、会社HPへの住所記載など制限される場合もあります。
事務所、店舗として契約できるマンションは僅かですがあります。それは、大家さんの自己責任で貸しているだけで、合法かどうかは別問題。
一見マンションに見えても、事務所として建築されている建物も稀にあります。
賃貸マンションにおける事務所使用の契約は、イレギュラーな形となります。大家さん側のリスク(違法性や税負担)もあり、時期的に認めない場合もありますのでその都度確認が必要です。
また、借主の業種によってはお断りされる場合もあります。