介護保険では「居宅サービス」「施設サービス」が受けられます。
在宅の要介護者・要支援者の場合は「住宅改修」にも介護保険が利用できます。家屋内外、転倒要因となりうる箇所の改修に、保険金が支給されます。
「保険金が出るから」と、勧められるがまま、安易に手すりの設置を依頼するのは考えものです。
手すりを3ヵ所、業者に発注したら
材工一式で約7万円かかったんだよね
業者に発注すれば、材料代の2倍くらいの費用がかかります。
手すりの取り付けぐらいは、電動ドライバーがあれば自分で簡単にできます。介護保険の申請は材料代だけで十分。
取り付け工事費に、介護保険を利用するのはもったいないです。
介護保険は建具や便器の交換、段差の解消工事にも使えます。限られた支給額(18万円)は計画的に、最大限に有効活用しましょう。
ケアマネージャーは
先を見越したアドバイスをしてくれると良いんだけど・・・
介護保険制度とは
介護保険制度は、平成12年(2000年)に施行された国の社会保障制度。要介護認定を受けると介護サービスが利用できるようになります。
原則1割の自己負担で、26種類54のサービスが受けられます。
※前年度の所得に応じて、自己負担率は2割あるいは3割になります
介護保険の介護サービスは、大きく分けると
- 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
- 自宅で受けられる家事援助等のサービス
- 施設などに出かけて日帰りで行うサービス
- 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
- 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
- 福祉用具の利用にかかるサービス
自宅での介護や施設での介護、生活援助や身体介護サービスが受けられます。
介護保険の住宅改修
介護保険は住宅改修にも利用できます。
在宅の要介護・要支援者が居住する住宅に、手すり設置、段差解消などの小規模な改修を行った場合、工事費用(最大9割)が償還払いで支給されます。
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修(PDF)」
- 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「介護保険における住宅改修 実務解説(PDF)」
介護保険制度の住宅改修費は、あくまでも在宅の要介護・要支援者の保険金です。決して、家屋改修のための補助金ではありません。
利用限度額は20万円
住宅改修の利用限度額は20万円/人。工事費用の最大9割(18万円)が住宅改修費として支給されます。
20万円を超える改修工事も可能ですが、限度額を超えた額については全額自己負担。
住宅改修費の支給は1回だけではありません。利用限度額までは何度でも申請できます。
支給対象となる住宅改修工事
区分 | 内容 |
---|---|
手すり | 廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに転倒予防もしくは移動または移乗動作を円滑にすることを目的として設置する改修 |
段差解消 | 居室、廊下、便所、浴室、玄関などの各室間の床の段差および玄関から道路までの通路などの段差または傾斜を解消するための改修 |
床材変更 | 居室について板製床材、ビニル系床材、畳敷きなどへの変更、浴室の滑りにくい床材への変更、通路面の滑りにくい舗装材への変更などの改修 |
建具取替 | 開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置などの改修 |
便器取替 | 和式便器から洋式便器への取替え、既存の便器の位置や向きの変更 |
上記の 付帯改修 | ・手すりの取付け手すり取付けのための壁の下地補強など ・段差の解消浴室の床のかさ上げなどに伴う給排水設備工事、スロープの設置に伴う転落や脱輪防止を目的とする柵や立ち上がりの設置など ・床または通路面の材料の変更床材などの変更のための下地の補修や根太の補強または通路面の材料の変更のための路盤の整備など ・扉の取替え扉の取替えに伴う壁または柱の改修など ・便器の取替え便器の取替えに伴う給排水設備工事、便器の取替えに伴う床材の変更など |
<介護保険>住宅改修の施工業者と支給方法
介護保険による住宅改修工事の発注先は任意です。指定業者制ではありません。
改修にかかった費用は、いったん全額を施工事業者に支払い、その後申請により最大9割の支給が受けられます(償還払い方式)。
「受領委任払い取扱事業者」として登録された施工事業者に発注した場合は、支給先を事業者とすることができます(受領委任払い方式)。費用の支払いは残額のみです。
<介護保険>住宅改修費の支給申請手続き
住宅改修費の支給を受けるには、以下の手順が必要です。
- 住宅改修をする前にケアマネジャーに相談、「介護保険住宅改修状況等確認書(住宅改修が必要な理由書)」の記載を依頼
- 住宅改修の着工前、「事前確認書」を役所へ提出。承認後に工事に着手
- 工事完了後、「介護保険居宅介護・介護予防住宅改修費支給申請書」を提出
確認書と申請書はお住まい地区の役所ホームページから確認できます。
※内容はほぼ全国共通です
参考 介護保険住宅改修状況等確認書(名古屋市書式)
添付書類として
- 理由書
- 工事費見積書
- 簡単な計画図
- 現況写真、他
- 理由書
- 改修費用の領収書
- 工事費内訳書
- 完成写真、他
参考 見積書・内訳書(名古屋市書式)
※材料費、施工費、諸経費等は分けて記載
介護保険償還払いの支給
介護保険居宅介護・介護予防住宅改修費支給申請書を提出後、支給方法が償還払い方式の場合は、「介護保険償還払支給決定通知書」が支給前に申請者(被保険者)宛に届きます。
支給金額、振込先の口座などが確認できます。
ケアマネージャー(介護支援専門員)
上述のとおり、住宅改修費の支給申請には、ケアマネージャー作成の「介護保険住宅改修状況等確認書(住宅改修が必要な理由書)」が必要になります。
作成は無料です。
要支援・要介護認定者およびその家族からの相談を受け、介護サービスの給付計画(ケアプラン)を作成し、自治体や他の介護サービス事業者との連絡、調整等を行う有資格者
住宅改修費の支給を最大限活用する
住宅改修は、介護プランの1つとしてケアマネージャーから提案されることが多いようです。このとき業者の紹介もあります。
指定業者ではないので、業者は自由に選定できます。
改修で多いのが、手すりの設置と玄関の踏み台設置(段差解消)。支給限度額の範囲内であれば、手すりは必要な個所に、何ヵ所でも設置できます。
1割負担だからといって、安易に提案を受け入れるのは要注意。
今直ぐにではなくても、段差の解消や建具の取り替えも検討したい場合は、手すりの設置は業者に発注しない方が良いかもしれません。
家族の方が身近に居れば、手すりは購入と設置が家族でもできるからです。
手すりの工事費で介護保険の支給枠を減らさない
手すりの設置を業者に依頼すれば、材料費と工事費は介護保険の対象です。一方、家族が設置すると、対象は材料費だけになります。
限られた支給額は、素人ではできない工事に割り当てるのが得策です。
例えば、開き戸を引き戸に交換、洋間と和室の段差解消。すべて改修すれば、おそらく支給限度額では足りません。
介護保険における住宅改修費の支給申請は、一般的に施工業者が行います。簡易な改修であれば、申請は家族の方(素人)でもできます。不明な点はケアマネージャーまたは役所に相談すれば解決できます。
申請は限度額の範囲内であれば何度でも可能です。住宅改修費の支給は最大限有効に活用するのが賢明です。
D.I.Yで 介護用品の設置
介護保険における住宅改修で、素人でもできるのは「手すり」と「玄関踏み台」の設置。
電動ドライバーがあれば簡単です。
浴室手すり
浴室壁がコンクリート下地の場合は、ネジ止めの前にアンカーを埋め込みます
ユニットバスの場合は、壁厚が薄いので専用のアンカーが必要
木製手すり
エンドブラケット付き手すりは、服を引っ掛ける心配がありません
場所に応じてL型手すりも
廊下には、カット加工可の長尺手すり
ブラケットで手すり棒を壁面に取り付けます
玄関 踏み台
玄関の段差解消工事として踏み台を設置。必ず固定しなければなりません。